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司法の無効判決は抑制的であるべき [天録時評]

 昨年12月の衆院選挙を巡って広島高裁が2月25日「一票の格差は違憲」とし、広島一区と同二区の選挙を無効とする判決を出した。これまでも司法から頻繁に一票の格差は違憲とする判決が出ていたが具体的な選挙区での選挙無効は憲政史上初めてだ。
 昨年12月の衆院選挙での一票の格差は最大で2.43倍。今回指摘されたのは最も人口の少ない高知三区の一票が広島一区の一票に対し、1.54倍、同二区は1.92倍だった。これまで高裁は一票の格差について3倍位の範囲で容認していたが、最近では2倍を超えても違憲判決が出ているので、ある程度は予想されたようだ。しかし今回の無効判決には疑義がある。広島高裁は判決で「最高裁の違憲審査権も軽視されており選挙は無効と断ぜざるを得ない」と述べている。平成21年の総選挙での一票の格差を「違憲」とした最高裁判決を無視して総選挙を実施したことは問題だが、判決が司法の怒りの表明では困る。広島高裁の該当選挙区での格差は2倍を超えてはいない。選挙を無効とすれば社会に甚大な影響を与えるだけに司法は慎重、抑制的であるべきだ。一票の格差は是正しなければならないが、どこの国でも2倍位は容認している。先進国でも国民各層に受け入れられる選挙制度の制定には苦労し、国の事情で選挙制度は異なる。人口だけを基準として区割りをしても有権者数も投票者数も異なるので、完全に平等な一票の価値は実現できない。また国は都市部だけで成り立っている訳ではなく国境の離島に住む人達の声を国政に反映させることも必要だ。
 米国上院は州の代表を選出するので、70倍の格差があっても憲法違反とされない。下院では州ごとには一票の格差があっても容認されるが、同一州内での格差は禁じられている。人口の増減、地域の持つ文化的繋がり等、一票の格差をなくす完全な選挙制度はできない以上、その理念を明確にすることが求められる。
 一方、各政党の利害が絡むため衆参両院の選挙制度改革は遅々として進まない。衆参の国会議員にとって自らの議員生命を左右する制度で公平、合理的な決断を求めるのは難しい。選挙制度改革を実現するためには有識者による選挙制度委員会を設立し、委員会での決定をそのまま国会でも承認する制度とすべきである。
平成25年4月19日 日本時事評論より

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