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持てる国・ロシア [今、考えること]

 二十世紀後半、アメリカと世界の覇権を争ったのがソ連。1991年にロシアやウクライナ、ベラルーシなど11カ国からなる独立国家共同体に移行し、その中核であるロシアも、アメリカに比べて存在感は低下していった。そのロシアが今、エネルギー資源を使って「強いロシア」への復活を果たそうとしている。
 日本の45倍の広大な国土を持ち、エネルギー資源に恵まれた国・ロシア。天然ガスの埋蔵量は世界の26%(1位)、石炭は17%(2位)を占め、さらに、石油やウランも産出する。それらの資源は世界に輸出され、特に天然ガスはヨーロッパで消費される8割を供給するという。
 陸続きのヨーロッパでは国境を越えてガスパイプラインや送電線が張り巡らされている。ロシアの天然ガスは隣接するウクライナに供給され、さらにウクライナを経てヨーロッパ各国に届く。ポーランドやオーストリアは消費する天然ガスの9割前後をロシアに依存し、ドイツやイタリアでも4割前後はロシア産の天然ガスだ。2006年1月、ロシアが天然ガス価格の値上げをめぐってウクライナへの供給を停止する事態も起き、その後、ヨーロッパでは天然ガスの安定確保が課題となっている。ロシア側も新たなパイプラインとして、バルト海を通ってドイツに至るルートや、黒海を通ってイタリアに至るルートも計画している。
 また、ロシアは極東のサハリンで石油と天然ガスの開発計画を進めている。サハリン1、サハリン2などの計画があり、日本などの外国資本が開発に加わっている。しかし、ロシアと締結した生産物の分与協定では、ロシアの取り分が少なかったため、2006年9月、環境アセスメントの不備を理由にロシアはサハリン2の開発を中止させ、その取り分を増やす形で決着する事態も起きている。
 さらにロシアは、天然ガス埋蔵量で世界2位のイラン、3位のカタールなどに呼びかけて、輸出国カルテルを組もうとしている。石油輸出国機構OPECの天然ガス版である。石油の利用が本格化した二十世紀前半、産油国は石油を輸出しているにもかかわらず得られる利益は少なく、価格決定権も持っていなかった。メジャーと呼ばれる欧米の国際石油資本が、市場を支配していたからだ。それが1960年にイランやイラクなど5カ国がOPECを設立し、加盟国の石油政策を一元化して、石油の市場価格への影響力を高めた。これに習い、ロシアは天然ガスを戦略物資として、世界の天然ガス市場をコントロールしようとしている訳である。
 ロシアはエネルギー資源を「持てる国」だ。中国やインドなどの発展により、世界でエネルギー消費が拡大する中、ロシアは資源を使って国際社会での発言力を強めようとしている。一方、エネルギー消費量は世界4位でありながら、石油・石炭・天然ガスのほぼ全量を輸入に頼るのが日本だ。「持たざる国・日本」は、いかなるエネルギー政策を取るべきか、その確立は待ったなしである。

平成20年11月21日 日本時事評論より

タグ:資源
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