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地球温暖化問題を読み取る力 [今、考えること]

 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)を、日本は1年間(平成18年度)に12億7500万トン排出している。1人あたり年間10トン、1日だと27キログラムを排出していることになる。
 家庭や工場などからの二酸化炭素排出量を、その発生段階で見ると、発電所などのエネルギー部門から30%、工場などの産業部門から30%、事業所から8%、家庭から5%となる。

 日本の二酸化炭素排出量の割合.JPG
 発電所などで生み出した電気や熱は二次エネルギーとして使われるため、その消費量に応じて振り分けた最終消費段階を見ると、産業部門から35%、事業所から18%、家庭から13%となる。電気製品を使っても二酸化炭素は出ないし、電気自動車であれば排気ガスも出さないため、電気はクリーンな印象を受けるが、それは電気を使う場所でのことで、電気を作る過程では、化石燃料を使っている限り二酸化炭素を出している。
 エネルギー部門のうち、東京電力の年間排出量は9760万トンで、一つの企業で日本の8%近くを排出している。原子力が発電量の38%を占める東京電力だが、中越沖地震により柏崎刈羽原子力発電所が停止している。その発電量を石油火力発電でまかなった場合、二酸化炭素を年間2800万トン排出することになるという。実に日本の排出量が2%増えるというから驚きだ。電気を使う家庭や工場だけでなく、電気の生産から消費まで通して二酸化炭素排出量を見る必要がある訳だ。
 排出量とは別に、二酸化炭素排出原単位という言葉がある。「鉄1トンを生産するため」「電気1キロワット時を作るため」といった単位数量に対する二酸化炭素排出量のことだ。電気1キロワット時を作るために日本では0.41キログラムを排出し、電力会社は2008~2012年度には0.34キログラムまで引き下げることを目標に、排出削減に努めている。原単位を下げれば確かに二酸化炭素排出量は減るが、実際に温暖化を防止できるかと言えば、たとえば原単位を2割下げても、電気の消費量が2割以上増えた場合には、総量としては増えてしまうことになる。
 今、二酸化炭素の排出権取引も盛んに議論されている。企業などに二酸化炭素の削減目標を設定し、より努力して上限よりも削減できた場合、その削減分を排出権として売ることができる仕組みだ。つまり削減努力が金銭の形で報いられることになる。その一方、削減努力をしなくても、排出権を買うことで目標を達成した形にでき、数字合わせのルールのようにも見える。また、日常生活や企業活動で排出した二酸化炭素を相殺するため、自然エネルギー開発に投資するための寄付を、葉書や旅行などの商品価格に上乗せする取り組みも広がっている。
 「環境リテラシー」という言葉がある。リテラシーとは、読み書きする能力のことだ。どうすれば二酸化炭素排出量を減らして地球温暖化を防止することができるのか、私たちは判断する能力を本当に身に付けているだろうか。「地球にやさしい」といった感覚的な言葉に惑わされることなく、効果的な温暖化対策を見極める目を養いたいものだ。

平成20年5月20日 日本時事評論より

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